ルミナリエの夜

( 僕がこの仕事を始めるきっかけになった出来事 )。

主婦である彼女との交際は、彼女が僕にラブレターを手渡してくれたことに始まった。僕の勤務する会社に彼女が来るようになったのが半年ほど前のこと。初恋のひとに似た彼女と廊下で出会うたび甘い痺れを感じ、それでも挨拶する程度の関係に始終していた彼女に、僕が会社を去ることを告げた数日後のことだった。彼女の勇気に感動し、彼女も僕と同じ想いであることを知って感激した。手紙にはメールアドレスが書いてあった。その日からeメールの遣り取りが始まり、先週水曜日が初めてのデート。一週間後の今日が二回目。

ルミナリエは今年で13回目だが、彼女は一度も見たことがないとのことだったので、雨天にもかかわらず見物に出掛けた。阪急三宮で電車を降り西に歩いた。元町の駅前から本格的な規制が始まっていたので、彼女と手をつないで歩いた。1時間前まで雨が降っていたおかげで人出が少なかった。所々で道路を横断する人を通すため足止めされたものの、基本的に行列は流れていて、30分程度で会場に到着した(土曜日ファミリーで来た時は2時間弱かかった)。僕は毎年のように見に来ていて、これで今年2回目だが、何度見てもいい。彼女も喜んでくれていた。

国際会館向いのレストランで一緒に夕食。黒ビールを飲み、料理をつつきながら、エロ話の波状攻撃で彼女の緊張を解いた。口数の少ない女性だが、飲むと少しは話をしてくれるようになる。また生真面目な感じなのにエロ話を聞いてくれるし、聞けば答えもてくれる。旦那との不和の経緯や、その後今に至るまで7年間レス状態が継続していることは一回目のデートの翌日、Eメールで教えてくれたが、その夜は初体験や旦那との性生活・新婚旅行のことまで話してくれた(というか、聞き出した)。

これだけ性が解放された時代なのに、これほど貧しい性生活を強いられている彼女に、同情を禁じ得なかった。ここまで聞いてしまった以上、男として何か応えなければならないという責任を感じた。しかし、20年もの長く満たされない性生活に甘んじ、既に官能の喜びを諦めかけている彼女に、どう説明すれば性への好奇心をよみがえらせてもらえるだろうか。説明のアイデアは思いつかなかった。結局、ありのままの気持ちを告げることしか思いつかなかった。「僕が、貴女を、癒して差し上げたいです。このあとお時間頂いて宜しいでしょうか?」

しばらくして「そういうことに縁がない人もいるんです」と、彼女は諦めの声で僕の申し出を断った。「申し訳ございませんでした。これ以上貴女を困らせてはいけないですね」と言って席を立ち、二人で店を出た。地下街を通り抜け、エスカレーターで地上に上がり、あと階段を上がれば切符売り場というところに来て、彼女が俯いて立ち停まった。これが何を意味するのかを理解するのに、経験のない僕は5秒ほどかかった。「まだ帰らなくていいんですね?」。俯いていた彼女が、かすかに頷いた。

10mほど先のJR高架下に客待ちタクシーの列があった。先頭の車に乗り込み、北野町のイスラム寺院に行ってくれるよう頼んだ。車を降りた30mほど先にホテルがあった。部屋は広かった。時間が限られていたので早々に服を脱がせ、入浴も省略して、寝台に上がった。全身をフェザータッチで愛撫したあと、胸と陰部を丹念に舐める。反応が控えめなので躊躇ったが、あと5分で22時という時刻になっていたし、彼女も嫌がっていなかったので、正上位で挿入を開始した。7年間のブランクがあるので痛むかもしれないと思い、ゆっくり慎重に挿入していったが、根元まで収まった時点でも痛くないとのことだった。相変わらず控えめながら、挿入後の反応は悪くはなかった。その可愛い声に励まされて往復運動を続けたが、30分経過したところで時間切れ、中止して帰ることにした。慌しいプレイであったが、それでも彼女は喜んでくれていた。

来週は生理が始まっている可能性があるとのこと。始まっていればプラトニックなデート、始まる前ならエロティックなデートをしましょう、という話になっている。官能の喜びを諦めかけていた彼女が僕とのプレイを楽しみにしてくれている。僕のセックスが一人の女性を癒した。そのことが嬉しい。

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